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ピカソの隣人 ヴィトラのショールームへ行く

(ヴィトラ社のショールーム)

バーゼルに数ある美術館の中でも、特筆すべきは「ヴィトラデザインミュージアム」。正確にいうとバーゼル市内ではなく、スイスとの国境を越えたすぐのドイツ国内にあるのだが、バーゼル市内からバスで20-30分ほどで着く。まわりになんにもない郊外の広大な土地に、家具メーカーのヴィトラ社の本社と工場、そして美術館がある。
美術館はアメリカ建築界の奇才、フランク・ゲイリーの設計で、工場やオフィスもザハ・ハディードや安藤忠雄など名だたる建築家の手によるもの。

私はキュレーター時代に、何度もこの美術館を訪れた。小さいながらも特徴のある企画展がすばらしい。
つい先日、ドナルドが所属する建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロン(HdeM)が手がけた「まったく新しいタイプのショールーム」が、美術館の向かいにオープンしたということで、ドナルドとともに見に行った。

外観はHdeMらしい奇抜なデザイン。立方体を複雑に組み合わせた形が「さあ見にいらっしゃい、おもしろいよ」と誘いかけているようだ。
中は階層が複雑に入り組んでいて、さながらプレイランドの赴き。上へいったかと思うといつしか下へ向かっていたり、こっちを見たいと思ったのに、あっちを見てしまったり、と迷路のような楽しさがある。東西に設けられた大きな窓からは豊かな自然の風景が見渡せる。そういう環境の中に、実に巧みにおしゃれ家具が配置してあり、つい座ったり触ったり。「ああ、ここが自分の家だったらな・・・・」と妄想せずにはいられない。


(立体的な空間構成)

ショールームらしからぬショールームに、訪れている人々はすっかりはまっている様子。子供たちも大喜びで(子供部屋のショールームもあった)、「パパぁ、あたしの部屋こんなのがいいッ!」とおねだりして騒いでいる(たぶん)。カップルは「将来はこんな部屋に住もうね・・・」と思わずラブラブモード。私はいまだかつてこんなに人々を夢中にさせるインテリアのショールームを見たことがない。もちろん家具も空間もすばらしかったが、何より人々が熱中しているのを見るのが楽しかった。


(ショールームからの風景)

(テラスで風景を楽しむ人々)

しかし熱中するだけであっさり帰られては会社的にはやっていけない。そこはさすが、なのだが、新しいタイプのショッピングシステムを導入している。
スタッフに頼んでその日限りのIDカードをもらう。これをタッチパネル型PCに挿入して、自分の名前とメールアドレスを入力。そしてほしい家具を検索し、値段をチェック。すぐに買わなくても、「興味あり」とクリックすれば、日を改めてヴィトラ社からメールが届くというもの。これにはうならされた。「焦って買わなくてもいいですよ、ゆっくり考えて決めてください」という余裕のメッセージが、かえって購買意欲を刺激する。うーむ、おそるべしヴィトラ社。


(タッチパネルでお買い物)

ドナルドはさっそく登録して、気になるチェストをチェックしていた。私だって気になりまくりなのだが、さすがに東京まで送ってもらう財力はなし。指をくわえて嘆息するばかり。

いつかはヴィトラでマイケル買い。ああ、またひとつ見果てぬ夢が増えてしまった。
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