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ピカソの隣人 旧友に会う
バーゼル在住の建築家、ドナルド・マックとは10年来の友人である。
私が森美術館準備室に勤務しているとき、一緒にプロジェクトを手がけて以来の仲。世界的建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン(HdeM)のプロジェクトリーダーとしてバーゼルに移り住み、7年が経つ。
ちょうど私が「カフーを待ちわびて」で小説家デビューしたとき、日本を訪れていた。「小説家になったよ」と告げると、「ワアオ!ザッツ・クール!!」とおもしろがっていた(冗談だと思ったのかも・・・)。しかし今回、私が新作小説の準備のためにパリに長期滞在し、かつバーゼルまで取材にきたと知って「ほんとに小説家になっちゃったんだね…」と驚いていた。キュレーター時代にいまより−10kgのスリムな体であちこち飛び回っていたあの頃の私と、毎日パソコンに向かい合って締め切りと格闘しているあの頃より+10kgいまの私・・・ってのが、どうも一致しないらしい。

粉雪舞い散るライン河の夜景を背景に、ファイアープレイスの火があたたかく跳ねる「トロワ・ロワ」のロビーでドナルドと再会。バーゼル在住で香港系カナダ人なのに京男のごとくはんなりとしたドナルドは、あいかわらずのいい男っぷりだ。


(HdeMのドナルド)

「ドナテロ」というイタリア料理店に夕食に出かける。店内には色々なアーティストたちのドローイングがあちこちに飾ってある。なんでも、「支払いはこれで・・・」とドローイングをその場で描いて残していったアーティストもいるとか。ピカソ、レジェ、アンディ・ウォーホルなどなど、「そりゃ現金よりドローイングのほうがいいよ」と言いたくなるようなアーティストがいっぱい。ならば私も「これで・・・」と一句ひねって置いていったらどうかな。即、警察に電話でしょうね。


(アーティストが通った老舗、ドナテロ)

お互いのいままでのできごとなど、和気あいあいと話していたが、突如「ところでバーゼルを舞台にどんな小説を書くの?」と、ドナルドから鋭い一撃をくらう。
ああ、それだけは訊かないでほしかった。なぜって、複雑なあらすじを解説するには、私の英語力は貧弱すぎる・・・・・・と思いつつ、あらん限りの単語を駆使して説明。英語で話すとものっすごいシュールな内容に聞こえる。ドナルドは目をぱちくりして聞いていたが、「それで、最後はどうなるの?」と。

だからそれを考えるためにバーゼルに来たんだってば!とは言えずに、うーん、とうなる私。パリに帰るまでに教える約束をしてしまった。大丈夫か私・・・・?
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